ホスピタリティ弁護士の長屋です。
月一投稿になりつつありますね。
月二投稿できるよう頑張ります。
さて、今回は遺品整理と葬儀についてです。
遺品の整理をしたら単純承認になるのか、相続放棄したら遺品の整理はできないのかなどとご相談を受けることがあります。
ご家族としては、故人の方の遺品を整理してあげたい、第三者(大家さんや債権者)から何とかしてくれと言われるなど様々な事情があるようです。
結論としては、遺品の整理は、常識の範囲内で行う分には問題ないということになりましょうか。
何の答えになっていないと言われるかもしれませんが、ケースバイケースで判断せざるを得ないのが実情です。
例えば、形見だからと言って高価な絵画や貴金属を勝手に持ち出したり、生前に故人が処分してくれと言っていた高価な遺品を勝手に処分したりすることが常識的にみてナンセンスなことは明らかだと思います。
しかし、衣類や家具を処分したり、形見のちょっとした貴金属を持ち帰ったりすることまで問題となるのでしょうか。
単純承認とみなされるのは、法律上、①相続財産の全部又は一部を処分したとき(ただし、保存行為は除く)、②相続放棄などの手続きを期間内(3か月)にしなかったとき、③相続放棄をした後でも、相続財産の全部もしくは一部を隠匿したり、私的に消費したり、悪意で相続財産目録中に記載しなかったとき、とされています(民法921条)。
遺品の整理が上記要件に該当するかを検討すればよいのですが、衣類を処分したり、身の回りの物を片付けたり(形見として持ち帰ったり)することが果たして上記要件に該当するのでしょうか。何がダメで何が大丈夫なのでしょうか。
結局、整理する遺品が「経済的な価値ある物(高価な物)」かどうかを常識的に判断するほかないと思われます。そして、常識的にみて、高価な遺品でなければ整理してもらって構いません(ただし、高価な物がないからといって遺品を全て整理してしまうことは単純承認とされるケースもあるので注意が必要ですが)。
また、借家の場合に、家賃滞納があるケースでは、大家さんに迷惑がかかるからという理由で滞納家賃を支払いたいというご家族の方もいらっしゃいます。
これについては、家賃滞納は故人の債務であり、故人の相続財産から支払うことは厳に止めておくべきです。そもそも家賃滞納は大家さんが負担すべきリスクですので、ご家族の方が気にする必要はありません。
もし、どうしても放置できないというのであれば、故人の相続財産からではなく、ご家族の負担で支払うほかないでしょう。
最後に、葬儀費用は一般的に相続財産とは考えられていませんので、原則、故人の財産(預貯金など)から葬儀費用を支出することは問題ありません(ただし、常識を逸する支出は相続財産の流出になりますので「処分」とみなされる可能性もあります)。
また、香典は一般的に喪主のものとされていますので、受け取ってもらっても問題ないでしょう(相続放棄していたとしても問題ありません)。
ご家族の優しさ、周囲に対する配慮などから、せめて故人の遺品を整理してあげたいというお気持ちは十分に理解できるのですが、せっかくの善意が仇にならないよう慎重に行動しなければなりません。