こんにちは、ホスピタリティ弁護士の長屋です。
さて、今回は共同経営の問題点を少しだけ。
たとえば、友人二人で商売を始めると仮定しましょう。
まず、会社形態にするのか、個人商店でするのか分かれます。
個人商店でする場合、どちらか一人が個人事業主として届け出をし、さまざまな契約や取引の当事者とならなければなりません。当然、税務申告なども行わなければなりません。もう一人は、対外的には、一従業員などとして関与することになります。
一方、会社形態の場合、会社自体が契約当事者となれますので、二人とも株主、取締役として事業に関与していくことになります。
共同経営というのは、商売が上手くいっていないときは揉めにくいと言われています(窮地打開のため協力する必要があるため)。ところが、商売が軌道に乗り売上が上がってくると、次第に揉め始めます。「俺の方が売り上げに貢献している」「楽ばかりしているあいつと同じ取り分なのはおかしい」といった具合にです。
ところが、実際にこれを解決することはなかなか難しい問題なのです。
共同経営の法的解釈が問題になります。
共同経営が民法上の組合と評価された場合を考えてみましょう。
「組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって、その効力を生ずる」(民法667条)と規定され、損益分配に関し「当事者が損益分配の割合を定めなかったときは、その割合は、各組合員の出資の価額に応じて定める」(民法674条)と規定されています。
しかし、各人の役割やその取り分、脱退するときの払い戻し方法(民法681条参照)や撤退するときの清算方法などきちんと契約されていることはほとんどありませんし、 そもそも労働力や経験(労務)を出資する場合(民法667条2項)は、出資割合をどう評価すればいいのか判然としないため、各人の取り分や脱退を巡って揉めることが多いのです。
個人商店の場合、どちらか一人が契約当事者として矢面に立たなければなりません。連帯保証人を必要とする場合には、もう一人にも同じように無限責任を負わせることができますが、基本的には、矢面に立つのはどちらか一人です。ところが、そのリスクを評価に入れていない場合も多いでしょう。
どちらか一人が事業から手を引きたいと考えた場合でも、そもそも事業価値を簡単に評価できませんし(裁判所できちんと鑑定してもらうと高額になる)、然したる価値が付かない場合が多いでしょう。
それに、脱退する人が契約当事者であったならば、すべての契約関係をもう一人に移行させなければなりませんが、必ずしも脱退者の協力を得られるだけ信頼関係が維持されているとは限りません。商売するうえで必要な財産の場合は足元を見られ、高額の払戻しを要求されることもあるでしょう。
また、一人が事業資金の借入など債務を負っている場合には、対外的にはその人が無限責任を背負わなければなりませんが、内部的には持分に応じた責任を果たさせることができるかの保障はありません。
共同経営はほとんどが信頼関係の上に立っているため細かな取り決めをしていません。商売を始めるときには、きちんと話し合い、きちんと取り決めをしておくことが必要だと思います。