ホスピタリティ弁護士の長屋です。
知識の整理のために少しだけ。
在留特別許可(入管法50条1項)は、退去強制事由に該当する外国人に対して在留を認め、非正規滞在を正規化する制度です。
法務大臣の裁決の特例が「在留特別許可」ですが、許可されると、当該外国人は、在留資格や在留期間が指定され(入管法50条2項)、以後、適法な在留資格を有する者として日本に在留できます。
それでは、不法滞在(オーバーステイ)を例に、簡単に手続きを説明します。
まず、不法滞在があると思料される外国人は、入国警備官が「違反調査」を行います(入管法27条)。
違反調査のあと、入国審査官に引き渡し、「違反審査」が行われます(入管法45条)。
違反審査の結果、不法滞在の事実が確認できれば、「認定通知書」が交付され(入管法47条3項)、認定に不服がなければ、「退去強制令書」が主任審査官によって発布され、入国警備官がこれを執行し、退去強制となります(入管法52条)。
※退去強制事由があっても、身柄を収容せず出国させる「出国命令制度」があり(一定の要件を満たす場合のみ)、この制度で出国した人は、上陸拒否事由の該当期間は、1年間と短くなります(退去強制の場合、5年間または10年間)。
前記認定に不服がある場合は、3日以内に、特別審理官に対して「口頭審理」を請求します(入管法48条1項)。この請求は、文字どおり、口頭で行えば足ります。
なお、口頭審理では、代理人の立会いが認められていますし、証拠提出や証人尋問もできます(入管法48条5項、10条3項~6項)。
そして、口頭審理の審問の結果、入国審査官の認定(不法滞在である)に誤りがない旨の判定を受けた場合は、判定の通知から3日以内に、不服の事由を記載した書面を主任審査官に提出して、法務大臣の最終的な判断を求めることができます(「異議の申出」(入管法49条))。
最終的に、法務大臣または権限の委任を受けた地方入国管理局長が、「異議の申出」の理由の有無(不法滞在かどうか)を判断します(裁決)。
法務大臣により裁決が下され、不法滞在であることが確定しても、「特別に在留を許可すべき事由がある」と認められれば、当該外国人は、在留が特別に許可されます(入管法50条1項)。これが「在留特別許可」です。
在留特許可は、法務大臣の自由裁量であり、その許否にあたっては、積極要素や消極要素を総合的に勘案して行うことなっていますが(「在留特別許可に係るガイドライン」)、許可の可能性が比較的高いといえるのは、日本人や永住者などと法的に結婚している場合や日本人の実子を親権を持って監護養育している場合などが挙げられます。