こんばんは、ホスピタリティ弁護士の長屋です。
週末はあいにくのお天気でしたね。大型の台風がやってきてますので十分に注意してください。
法律的なことばかりではなく、今日は少し息抜きに。
先のブログにも書きましたが、被告人には接見交通権が保障されていますので深夜でも面会できます。差し入れもある程度の融通を聞いてもらえるという印象もあります。代用監獄が問題になっていた時代とは異なり(諸先輩方の功績ですが)、被告人が弁護人との接見を求めれば、土日であっても、接見要請があると事務所に電話をかけてこられます。
被告人が接見要請をするたびに、何度も何度も電話をかけてこられます。「被告人が待ち焦がれています」とおっしゃる職員の方もいました。土日であれば、申し訳なさそうに留守電に伝言を残されたりします。もちろんどこかで時間を見つけて面会に行きますが、ご家族や知人の協力が得られない被告人の場合、私的なお願いをされることも多いです。
先日、夜間に接見に行ったのですが、午後11時頃に接見を終了して、やれやれと思って帰ろうとしたところ、職員に呼び止められました。「⚫︎⚫︎(被告人の名前)から宅下げがあるんですが・・」とのこと。
「なんだろう。謝罪文とか反省文かな」と思って引き返すと、職員がなにやら衣類が入った紙袋を持ってこられました。
私は思わず「これなんですか?私への宅下げですか?」と聞きましたら、職員は「服にシミがあるので、シミ抜きして欲しいそうです」と・・・
唖然としました。私は即座に「こちらから説明するので突っ返してください」と伝えました。職員は申し訳なさそうに「そうですよね。弁護人の仕事じゃないですよね」と。
被告人には色んな境遇の方がいらっしゃるので私を頼ってくださるのは構わないのですが、中には次第に度が過ぎてくる方もいらっしゃいます。私の方針としては、今後の信頼関係の構築もあるため、ある程度の希望であれば一度はお応えするようにしています(もちろん出来ること出来ないことははっきり分けています)。
過去に、服役する予定の被告人に頼まれ、差し入れ屋まで足を運び買い物をしてあげたことがあります(いい経験になりましたが)。その際、差し入れ屋の店主から、刑務所などでは、シャンプー、箸(箸入れ)など日常使用するものが指定業者のもの(拘置所内で買うもの)ではなく、外部からの差入れ品であることが「服役中の心の拠り所になる」と教えてもらいました。また、「弁護士さんが買いにくることはないですよ。ありがとうございます」とお礼を言われましたので、誰かが助けてくれたという気持ちの拠り所になるという側面はあるのでしょう。
確かに、ご家族や知人に差し入れてもらった物であれば「きちんと贖罪を果たして家族のもとへ帰ろう」と頑張れるのでしょうが、私に頼んだ被告人は少し違う気がします。私に買ってほしいものリストを送ってきましたが、鶴の絵柄の箸、金色をあしらった塗っぽい箸入れなど高級っぽい物をお願いしてきました。心の拠り所という意味では、高級っぽいのを持っていると刑務所内での序列が保てて頑張れるのでしょうか(常連さんでしたので)。
また、別の事件では、自宅で飼っている猫を部屋から逃がしてくれとのお願いもありました(警察の協力も得て、無事に逃がしてやりましたが)。
私の行為が被告人の気持ちにどのように作用しているのかはわかりませんが、私としては二度と犯罪を犯さないようきちんと罪を償ってくれることを祈るだけです。
今回は、ちゃんと事件の話もあってからのしみ抜き依頼でしたが(笑)、色んな境遇にある被告人の気持ちとどう向き合い、適度な距離を保っていくかがとても大切だと改めて実感させられました。