こんばんは、ホスピタリティ弁護士の長屋です。
さて、久しぶりの投稿です。
先日、精神科病院の閉鎖病棟に行く機会がありましたので、精神科病院への入院について少しだけご説明します。
精神保健福祉法には、次の5つの入院形態が定められています。
1 任意入院(22条の3)
2 措置入院(29条)
3 緊急措置入院(29条の2)
4 医療保護入院(33条)
5 応急入院(33条の4)
上記形態を見て、1が原則であることは当然です。法的にも「本人の同意に基づいて入院が行われるよう努めなければならない」と規定されています。
しかし、医療及び保護のために入院させなければならない場合もあります。そこで、本人の同意を要しない2乃至5の強制入院の形態が定められています。本人の同意を要しないため、人権に大きな影響を及ぼす入院形態といえます。
まず、2ですが、都道府県知事の決定により行政処分としてなされる強制入院です。2人以上の精神保健指定医の診断により、精神障害者であり、かつ、医療及び保護のために入院させなければその精神障害者のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあることという要件が必要になります。
なお、3については、急速を要する場合に要件を厳格にして手続を省略しているものです(72時間を限度として認めれるもの)。
この形態の要件である「自傷他害」のうち「他害」とは、原則として刑罰法規に触れるような行為(殺人、放火、性的問題行動など)をいいます。
次に、4ですが、指定医の診断の結果、その者が精神障害者であり、医療及び保護のため入院が必要で、本人に病識がないため同意能力がなく任意入院が行える状態にないと判定された場合に、保護者の同意を得て入院させる形態です。
この形態は、都道府県知事の行政処分ではなく、実施する権限を有するのは精神科病院の管理者ですので(33条)、退院させるか否かの権限も同管理者にあります。
最後に、5ですが、指定病院の管理者が保護者や扶養義務者以外の者(友人等)から医療保護の依頼を受けて、急速を要して、保護者の同意を得られない場合に行われるもので、本人の身元が判明しなかったり、家族と連絡が取れないなど直ちに医療保護入院をさせられない場合に、救急的な対応をするためのものです(72時間を限度として認められるもの)。
一方で、このような入院に不服がある場合については、入院者や保護者から都道府県知事などに退院請求や処遇改善請求をすることができ(38条の4、51条の12)、精神医療審査会による実地面接や審査を経て、不必要な入院であれば退院させ(医療保護入院の場合は、退院を命じる)、処遇改善に必要な措置を命じることになります(38条の5)。