こんにちは,ホスピタリティ弁護士の長屋です。
今日は区役所で日曜法律相談を行っていました。9時半から13時半まで休みなくご相談がありましたので昼食を取れず仕舞いです(笑)。
さて,前回の続きです。
競業避止義務を明記しておくのがよいとご説明しましたが,どんな内容のものでも構わないというわけではありません。先に述べましたとおり,退職者の自由を制限するものですから,合理的な内容でなければなりません。例えば,今後一切同じ仕事をしてはいけないとか,誰もが知っているような情報なのに一切利用してはいけないと取り決めることはできません。
一般的に,次のような判断要素をもとに検討し,内容に合理性が認められる場合にのみ有効とされています。退職者の自由を会社の利益を守るために制限するものなので,どのようにバランスを取るかが重要になってきます。
①会社の利益
→ 退職者の自由を制約してまで守るべき利益があるのか
②退職者の従前の地位
→ 役職など地位が高いと会社の利益に近いため有効なりやすい
③制限する範囲
→ 無制限での禁止(期間,場所など)は退職者の自由を害するため無効とされやすい
④代償措置の有無や内容
→ 自由を制約する代わりに十分な代償措置(手当,退職金など)が講じられていれば有効となりやすい
以上のとおり,総合的に判断していくため,画一的な結論を導き出すことは難しいですが,裁判例などを参考に見通しを立てていくことになりましょう。
また,会社を守るためのもう一つの方法としては,営業情報に関して秘密保持義務を負わせることです。
同義務は,在職中はもちろんですが,退職後も当然に負っている義務と解することもできます(競業避止義務と異なり,退職者の自由を直接制約していないため)。そうすると,会社の営業情報を利用して競業した場合には直ちに退職者の責任を問えることになりそうです。
しかしながら,退職者が競業する際には営業情報に触れることも多いため(密接に関連している),やはり退職者の自由に対する一定の配慮が必要になります。
そこで,営業情報の重要性や利用形態などを勘案して,会社に与える影響や損害が大きい場合に退職者の競業行為は違法と判断されることになりますが,そうではないと判断されると責任を問うことは難しいでしょう。
いずれの義務も明確にしておくことが退職者に対する牽制にもなりますので一度ご検討いただければと思います。