解雇予告手当にご注意??

ホスピタリティ弁護士の長屋です。

知人の弁護士と話していて話題に上がった「解雇予告手当」について少しだけ。

 

労基法20条には「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない」とあります。

要するに、1か月前に解雇予告し1か月後に解雇とするか、1か月分の解雇予告手当を支払って即日解雇するかということですよね??(はてさて・・・)

 

では、たとえば、週1回(月4回)出勤する日給1万円の労働者を即日解雇するときに、

「ほら、1か月分の給料4万円を渡すから、明日から来なくていいよ」

(※ここでは解雇事由の有無は無視してください)

でいいのでしょうか。

 

結論は、労基法20条に反して違法です。

さて、どういうことなのでしょうか。

 

よく条文をご覧下さい。

労基法20条には、「30日分以上の『平均賃金』」とあります。

では、平均賃金って何なのでしょうか。

そこで、労基法12条1項をご覧ください。

 

「この法律で平均賃金とは、これを算出するべき事由の発生した日以前3か月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額をいう。ただし、その金額は、次の各号の1によって計算した金額を下ってはならない」とされています。

 

そして、気を付けなければならないのが1号です。

平均賃金は「賃金が、労働した日若しくは時間によって算定され、又は出来高払制その他の請負制によって定められた場合においては、賃金の総額をその期間中に労働した日数で除した金額の100分の60」を下ってはならないとされています。

 

条文を整理したところで、上記事例について計算してみましょう。

平均賃金は(日給1万円×4日×3か月)÷90日=約1333円になります。

ところが、1号を確認すると、賃金の総額(12万円)をその期間中に労働した日数(12日)で除した金額(1万円)の6割(6000円)を下ってはなりません。

すなわち、1333円<6000円となり、平均賃金を6000円で計算しなければなりません。

 

もうお分かりですよね。

解雇予告手当は「30日分以上の平均賃金」なのですから、30日×6000円=18万円となります。

上記例の場合、従業員を即日解雇するためには、解雇予告手当を「4万円」ではなく「18万円」支払う必要があるのです。

 

したがって、使用者としては「1か月前に解雇予告し1か月後に解雇すべき」ということになりそうです。